監修:柳田直樹/鍼灸師(国家資格)・施術歴24年(令和8年現在)
目次
「レントゲンでは異常なし」と言われたのに痛い…その理由をご存じですか?
「腰痛で病院へ行ったが異常なしと言われた」
「湿布や薬を使ってもすぐ元に戻る」
「雨の日や疲れた日に痛みが強くなる」
このような経験はありませんか?
実は、痛み=骨や筋肉の損傷だけではありません。
近年の痛み研究では、神経や脳、自律神経、心理的ストレス、睡眠など、さまざまな要因が痛みに関係することが明らかになっています。
その中で重要な役割を担っているのが**ポリモーダル受容器(Polymodal nociceptor)**です。
一方、東洋医学では約2000年前から、
「痛みは身体全体のバランスが崩れた結果として現れる」
という考え方をしてきました。
現代医学と東洋医学は理論体系こそ異なりますが、「痛みは患部だけでは説明できないことがある」という点では共通する部分があります。
今回は、ポリモーダル受容器の基礎知識を紹介しながら、東洋医学との共通点と違いについて分かりやすく解説します。
ポリモーダル受容器とは?
まず最初に知っていただきたいのは、
ポリモーダル受容器=痛みを感じる神経終末(侵害受容器)の一種
ということです。
「ポリ(Poly)」は「多くの」、
「モーダル(Modal)」は「刺激様式」を意味します。
つまり、
一つの受容器が複数の刺激に反応する
という特徴があります。
どんな刺激に反応するの?
ポリモーダル受容器は、
一種類の刺激だけではなく、
① 機械的刺激
- 押される
- 引っ張られる
- 強く圧迫される
② 温度刺激
- 熱い
- 冷たい
③ 化学刺激
炎症によって作られる物質
例えば
- ブラジキニン
- プロスタグランジン
- 水素イオン
- ATP
などにも反応します。
つまり、
身体へ何らかの異常が起きたことを知らせるセンサー
なのです。
ポリモーダル受容器は身体を守る警報装置
例えば、
熱い鍋を触ると
「熱い!」
とすぐ手を離します。
これはポリモーダル受容器が働いているためです。
つまり、
本来は身体を守るために必要な仕組みなのです。
なぜ慢性痛になるのか?
ここが非常に重要です。
本来なら
ケガ
↓
治る
↓
痛み消失
となります。
しかし慢性痛では
痛みを感じる神経そのものが敏感になっている場合があります。
これを
「末梢性感作(まっしょうせいかんさ)」
と呼びます。
さらに、
脳や脊髄でも痛みを感じやすくなる
「中枢性感作」
という状態も知られています。
その結果、
軽い刺激でも
「痛い」
と感じやすくなることがあります。
鍼灸はなぜ痛みを和らげると考えられているのか?
鍼灸は古くから痛みに用いられてきました。
現代の研究では、鍼刺激によって、
- 神経系の反応
- 脳内での痛みの調節
- 血流の変化
などが起こる可能性が報告されています。
また、ポリモーダル受容器を含む感覚受容器への刺激が、中枢神経系の痛み調節機構に影響する可能性も研究されています。
ただし、その作用機序にはまだ研究が続いている部分もあり、すべてが解明されているわけではありません。
東洋医学では痛みをどう考えるのか?
東洋医学では
痛みは
「流れが悪くなった結果」
と考えます。
有名なのが
「不通則痛(ふつうそくつう)」
です。
意味は
「流れが滞れば痛みが起こる」
ということです。
気(き)の流れ
身体には
「気」が巡っていると考えます。
ストレスや疲労で
流れが悪くなると
痛みが起こると考えます。
血(けつ)の流れ
血流不足ではありません。
東洋医学でいう
「血」
とは
身体を栄養する働き全体を意味します。
この巡りが悪くなると
慢性痛になりやすいと考えます。
水(すい)
体液代謝です。
むくみ
雨の日の痛み
関節の重さ
などに関係すると考えます。
ポリモーダル受容器と東洋医学の共通点
ここが最も興味深いところです。
一見まったく違う理論ですが、
実際には似ている考え方があります。
共通点①
身体全体をみる
ポリモーダル受容器は
神経だけではなく
炎症
熱
圧力
化学物質
など
様々な刺激へ反応します。
東洋医学も
痛い場所だけではなく
全身状態を診ます。
共通点②
ストレスが影響する
慢性的なストレスは
痛みを感じやすくすることが知られています。
東洋医学でも
ストレスは
気滞
として考えます。
共通点③
睡眠が重要
睡眠不足では
痛みが悪化しやすいことが研究でも示されています。
東洋医学でも
睡眠は
気血回復の時間と考えます。
共通点④
自律神経との関係
自律神経が乱れると
痛みを感じやすくなることがあります。
東洋医学でも
自律神経に相当する働きを
気血の巡りという概念で説明します。
相違点はどこにある?
ここは誤解しやすい部分です。
東洋医学と現代医学は
同じことを言っているわけではありません。
| 現代医学 | 東洋医学 |
|---|---|
| 神経・炎症・脳の働きを中心に説明 | 気・血・水・五臓六腑などの概念で全身を説明 |
| 解剖学・生理学・実験研究に基づく | 長年の臨床経験をもとに体系化された医学 |
| 受容器や神経伝達物質など具体的な仕組みを研究 | 体質や季節、生活習慣を含めて総合的に判断 |
つまり、
説明の方法は違いますが、身体全体をみるという視点には重なる部分があります。
当院ではどのように評価するのか?
やなぎだ鍼灸整骨院では、
痛みのある場所だけではなく、
背景にある要因を確認します。
① 痛みの経過
- いつから痛いのか
- 天候との関係
- 日常生活で悪化する場面
② 姿勢分析
- 猫背
- 骨盤バランス
- 呼吸
- 身体の使い方
③ 生活習慣
- 睡眠
- 食事
- 運動
- ストレス
④ 東洋医学的評価
- 気滞
- 血瘀
- 寒邪
- 湿邪
- 脾虚
などの体質傾向を確認します。
そのうえで、患者さん一人ひとりに合わせた施術や生活習慣の提案を行っています。
まとめ|「痛み」を患部だけで考えないことが改善への第一歩
ポリモーダル受容器は、身体を守るための大切なセンサーです。
しかし、慢性的な痛みでは、そのセンサーが敏感になっている可能性があります。
一方、東洋医学では、痛みを「気・血・水の巡りの乱れ」や体質、生活習慣の影響として総合的に捉えます。
どちらの考え方も、「痛い場所だけを見るのではなく、身体全体を評価することが重要」という点で共通しています。
慢性的な肩こりや腰痛、頭痛、自律神経の不調でお悩みの方は、「痛みを抑える」だけでなく、その背景にある生活習慣や体質にも目を向けてみてください。
やなぎだ鍼灸整骨院では、東洋医学と現代医学の知見を踏まえながら、身体全体を評価し、一人ひとりに合わせた施術と生活改善のサポートを行っています。
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